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「あ、みんな、ちょっと待って。メイレン、進化できるって出たよ。」
洞窟を進んでいたら、アヤから声がかかった。どうやら、メイレンがレベル10に至ったようだ。
そして、光の幼妖精であるメイレンの進化先として提示されたのは、以下の通りだった。
光の小妖精
種別: モンスター・妖精
説明: 成長途中の妖精の一種。小さな身体には、光の力と、成長に必要なエネルギーが宿っていると言われる。
光の幼霊
種別: モンスター・精霊
説明: 光をつかさどる精霊の化身。幼い子供の姿を取っている。
描光の若妖精
種別: モンスター・妖精
説明: 成長途中の妖精の一種。光を写し取り、望む形を生み出すと伝えられる。
「光の小妖精」が通常ルートであり、例の「プチライトフェアリー」になるのだろう。
その他ルートには、精霊の眷属になるルート、そして、画家方向に覚醒するルートがあるようだ。
「うわぁ~、またなんか異色なのがあるね。」
「光の多様さみたいなものを感じた気がする。そういう方向に持っていった執念かもしれないけどな。」
「う~ん。えっと、メイレンは、どれになりたい?」
どうやら、アヤはちゃんと確認をするようだ。彼女の思考なら、「描光の若妖精」を速攻で選択してもおかしくなかったのだが…
「私は、描光の若妖精がいいと思うんだ。光を写し取るって、なんか楽しそうだって思うんだよ!どうかな?」
しっかり主張はするらしい。まぁ、この人、何かを強制したり強引に行ったりはしない人だったな。
とりあえず、肝心の選択肢について、メイレンに説明した。ブレイオやラフィもそうだったが、進化先が何であるのかは本人もわからないらしいからだ。
「え?進化、いっぱいあるの?」
「そうだ。アヤさんはあぁ言ってるが、メイレンは、これからどうしたい?彼女に教えてやってくれ。遠慮しなくていいぞ。」
「うん。アヤと、絵を描くのは楽しい。でも、ユーみたいに、キレイな光も出したい。」
厳密に言うとメイレンとアヤは主従関係であって親子関係ではない。だが、主人の影響はしっかり受けているようだ。絵を描くことが楽しいのか。
一方で、聖者の記憶の影響も残っているようで、俺が出したキレイな光、おそらく祝福魔法にあこがれがあるのだろう。まぁそれなら、答えは一つだな。
「そっか。あの光、凄かったよね。メイレンも、あぁいうの欲しいのなら、いいんじゃないかな?」
「いや、アヤさん。今は描光の若妖精が良いと思うぞ。魔法の制御を慣らしていかないと、使うに使えないからな。」
「え?そうなんだ。でも、精霊とかにならなくていいの?光魔法、凄く強くなるんだよね?」
「ダメ。精霊、危ない。」
「我もラフィと同じだ。精霊の力を得るには、今のメイレンでは器が足りぬ。」
どうやら、現精霊のブレイオから見ると、「光の幼霊」はNGなようだ。これも、例の闇落ちルートへ誘う類なのだろうか?あるいは「制御能力が未熟なため爆発する!」みたいな話だろうか?
「え?そうなんだ。えっと、ラフィちゃん、ブレイオちゃん、ありがとうね。」
「精霊のお墨付きが出たのもあるが、少なくともメイレンは精霊化は望んでいなさそうだぞ。目標は、光の祝福を使えるようになることであって、魔法を強くすることじゃないからな。」
「うん。ユー、精霊じゃない。でも、キレイな光、出せてる。進化したら、できる?」
「すぐには無理だ。それは、精霊になっても変わらないぞ。だが、これから学んで、訓練していけば、ちゃんと祝福が使えるようになるぞ。」
「うん。練習する。」
メイレンは、「浄化」の魔法を使うことができる。これは、治療魔法と光属性魔法を育てていくと生えるものだ。
しかし、メイレンは、まだ浄化の魔法を使っていない。今のメイレンの能力では、ゴーストに接近して浄化を浴びせる余裕が無いからだ。
「そっか。浄化って、ギルドとかで依頼を受けないといけないんだっけ?私、浄化できないんだけど、どうしたらいいかな?」
「それなら、水の魔法で洗ったり、風の魔法で乾かしたりすれば良いよ。ユーさんが浄化している時、ブレイオちゃんやラフィちゃんはそんな感じなことしていたからね。」
「汚いのが耐えられるなら… という注釈は付くけどな。まぁ、直に触る必要はないし、臭いはマスクで何とかすれば良いから、男女問わず、やっている人はいるみたいだぞ。」
「あ、あれか。見たことがある。あれなら、メイレンと一緒にできるかな?」
なおまとめウィキによると、「聖福」を習得するためには、以下に挙げる条件を満たす必要がある。
- 「浄化」に関わる技能を、下級のレベル15以上まで育てる。
- 200個以上のアイテムを洗浄、または浄化する。
- 「呪われたアイテム」を10個以上認識する。鑑定するか、手に取って呪われればOK。当然、後者は危険なので、通常は鑑定で数を稼ぐ。
- 不死系、または、ゴースト系モンスターを50匹以上討伐する。なお、自分で倒す必要は無い。
- フィールドボス、またはダンジョンボスを、1匹以上討伐する。これも、自分で倒す必要は無い。
- 教会で、4神の像を参拝し、その存在を認識する。
- 以下に挙げる特殊条件のいずれかを達成する。
- 一定量以上の対象物を一度に浄化する。先日、海で達成したもの。
- 浄化の力のみを用いて、レベル22以上のフィールドボス、または、ダンジョンボスを討伐する。パーティで挑んで良いが、ボスへのダメージは、全て対象者による浄化系技能でなければならない。実質的には第4マップ以降のボスモンスターになる。
- 1000個以上のアイテムから呪いを解呪する。
- 1000回以上の戦闘不能を復活させる。
- 10000回以上、生物を回復、または治療する。
- 100日以上、聖職者として活動し、指定された位に就く。
- 「聖者」、「聖女」、「祝福」のいずれかの名が付いた装備品を20日以上装備し続ける。なお、第7マップくらいのダンジョンでようやくドロップするレベル。
- 祈祷系の技能を上級まで育てる。
- 「光の心」系統の技能を得る。なお、ナチュラルに習得できるのは第10マップが初。
上記の通り、7つの条件が複合している上に、特殊条件が厳しいのである。むしろ、特殊条件を満たす過程で、他の条件を勝手に満たすことが多いので、気長に旅をしながら条件チャレンジすることが推奨されている。
幸いなことにメイレンは「光の心」を最初から習得しているので、特殊条件は満たしている。だから、残りの条件を満たしつつ、強くなって行けば良いはずだ。
「メイレン。あなたを 描光の若妖精 にするよ。これからも、一緒に楽しもうね!」
「うん!」
その後、正面から、聞き慣れた進化のエフェクト音が聞こえてきた。
なお、カナミーから聞いた話によると、進化エフェクトは、属性や種族によって、エフェクトの色や、飛び散るエネルギーの粒なんかが違うらしい。ただし、極端に演出が違うモンスターは確認されていないそうだ。そうなると、同じような音が聞こえることは仕方の無いのだろう。
「メイレンは、光の幼妖精 から 描光の若妖精 に進化しました。進化に伴い、能力値の再計算、並びに、技能が変化します。」
「アヤ!進化した!」
「わぁ!凄い!大きくなった!」
「あぁ、体つきは男っぽくなった気もするね。でも、女の子でもいけるかな?」
どうやら、進化に伴い、体が大きくなったようだ。「小妖精」ではなく「若妖精」を選択したため、いわゆる、職業覚醒系フェアリーになったのだろう。
その後、メイレンは俺の手も取って握手をしてきた。なので、その時に触鑑定をさせてもらった。
名前: メイレン
種族: 描光の若妖精
種別: モンスター・妖精
説明: 成長途中の妖精の一種。光を写し取り、望む形を生み出すと伝えられる。
レベル: 10
体力: 13
魔力: 24
筋力: 9
防御: 13
精神: 19
知性: 24
敏捷: 13
器用: 28
技能:
適性: 描画15, 彫刻14, 魔法(光13, 闇1, 治療10)
技術: 念話2, 魔力操作14, 浮遊11, 精神集中14, 危険感知12, 索敵魔法11, 観察10
支援: 光の心, 言語(人類), 世界知識, 絵心, 視力強化(暗, 色)
耐性: 混乱抵抗, 幻影抵抗, 暗闇抵抗
特質: 若妖精, 若体
若妖精:
説明: 自然に満ちる魔力に同調する存在。魔法効果増幅(微)、魔法制御能力低下(微)、MP自然回復増幅、HP自然回復縮小
どうやら、「光を表現するために影が必要」という意味なのか、闇属性魔法の適性が生えたようだ。また、暗視や色視といった、描画に必要な技能や、光と闇に関連する抵抗技能も生えていた。
、なお、「魔法(闇)」があっても、「聖福」の習得は可能だ。というより、「魔法(光)」が無くても、条件さえ満たせれば習得可能、というのが正しいだろう。これは、適性さえあれば、祈祷や踊りなどでも浄化が可能だからだ。
例えば、今ブレイオが育てている「気留術」を、聖職ルートである「聖気留術」に進化させると、浄化を行なうことが可能になる。すると、ブレイオに光、闇属性魔法の適性は無いが、浄化を繰り返していけば、「聖福」が習得できるのだ。尤も、俺は僧侶の役割を求めていないので、ブレイオが祝福をする未来は訪れないだろう。