13-16 体が大きくなったので

改定:

本文

「浜辺に入りました。プライベートモードに変更しますか?」

(プライベートにしてくれ。)

メイレンが「描光の若妖精」に進化したことで、大きく変わったことがあった。それは体格である。

リーネさんいわく、職業覚醒系フェアリーと同じように、自分の足で歩くことが可能らしい。そして、地面に降りた状態の身長は、100cmくらいだそうだ。幼妖精の頃の身長が50cm以下だったので、明確に大きくなったと言える。

そうなると、やった方が良いことが出てくる。それは、「疾走」や「水泳」、「跳躍」などの運動系技能の習得だ。

あと、進化したので、武器を使うかどうかについても検討することになった。というのは、洞窟でゴーストから攻撃された時、防ぐ手段が無くて苦労したからだ。

「ユーさんとはよく語り合っているけれど、アヤさんは久しぶりだね。」

「あ、えっと… トマの塔の?」

「アステリアさんだ。木工、裁縫、測定のことは教えてもらえると思うぞ。あと、適性測定のこともあってな。」

「あぁ、そういうことか。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく。造形師を取った人との伝手も欲しかったから、ユーさん共々、仲良くして欲しいね。」

そして、久しぶりにアステリアの召喚に成功した。

今回、彼に来てもらった目的は、メイレンの属性適合性測定と、アヤへの顔繋ぎだ。彼女も造形師を取り、生産技能に手を漬けているようなので、引き合わせておいた方が良いだろう… と考えた。

なお、アステリアもしっかりイベントに参加し、生産をがんばっていたとのこと。だが、途中でアンデールの僕に襲撃されパーティ戦に突入。不運なことに、居合わせたパーティが倒され、そのまま全滅してしまったらしい。

「あぁ、イベント、そうだったんですね。」

「いやぁ、アレは運が無かったよ。どうやら、レベルや職業に対応した僕が来るみたいでね。たまたま、闇属性弱体の装備を付けていた人が多かったんだ。」

「それは不運だな。悪魔への備えとして間違っているとはいえ、装備の性能が高いと乗り換えるのも厳しいだろう。」

「一応、戦闘前にまともな装備にはパージしていたんだよ。でも、第5マップのお下がりしか無くてね。レベル45相手にはさすがに厳しかったのさ。」

やはり、アステリアは1つ上のレベル帯だったようだ。レベル45のボスなら、その能力は第7マップ相当、使用される技能もガッツリ上級になる。故に、装備のグレードや相性が合わないと、あっさり死ぬだろう。

そんなアステリアの能力を鑑定させてもらったら、以下のようになっていた。

名前: アステリア

種族: 山エルフ

職業: 造形師, 錬金術師

性別: 男

称号: 上級生産者, 中級測定師

レベル: 48

体力: 63

魔力: 208

筋力: 81

防御: 29

精神: 179

知性: 156

敏捷: 40

器用: 243

技能:

適性: 上級木工6, 上級皮革6, 上級裁縫6, 上級錬金6, 上級調薬6, 上級測定1, 描画18, 彫刻17, 魔杖術6, 生産槌術11, 魔法(土30, 水30, 風30, 炎30, 光30, 闇30, 雷30, 氷30, 木30, 治療30, 付与30)

技術: 直感27, 魔力感38, 上級並列思考1, 魔力一体1, 高速解体12, 鑑定34, 上位精神統一1

支援: 生産術46, 視覚強化(暗、魔), 聴覚強化, 嗅覚強化, 触覚強化, 世界知識, 看破, 識別, 剛魔, 剛精, 剛護, 繊細, 森の心, 山の心, 大地の心, 炎の心, 滝の心, 薬草学, 素材学

耐性: 毒耐性, マヒ耐性, 睡眠耐性, 身体異常抵抗, 精神異常抵抗, 魔法異常抵抗, 即死抵抗, 魔耐性

特質: 妖精人

「さて。準備もできたし、メイレン君の属性適合性測定を行なおう。」

「え?メイレンって男なんですか?」

「あぁ、違う違う。妖精に性別は無いから、呼びやすいように呼んでいるだけだよ。測定技能で見た感じだと、男性の身体に似ているようだけれど、だからと言って男とは言えないし、進化すると見た目って変わるから、あまり参考にならないんだ。」

「あ、そうなんですね。ブレイオちゃんやラフィちゃんは、はっきり性別がわかるから、メイレンもそうなるのかなって思いました。」

「もう一段階進化すると、はっきり性別が付くかもしれないけれどね。ちなみに、この手のモンスターの性別は、主人の影響を受けるよ。」

どうやら、「測定」技能があると、性別の因子のようなものは測れるらしい。その技能で、性別が「中性寄り」と出ているのなら、はっきりとしていないのだろう。

そのまま、メイレンの属性適合性測定が始まった。その結果…

「一番強いのは光と闇。あとは順に水、風、木、土だね。治療と付与込みで8属性の適性があるなんて、贅沢だと思うよ。」

「これがメイレンの属性… へぇ~、グラフみたいに出るんですね。」

「これね。上級になると、測定結果を映写できるようになるんだ。ちなみに中級でも自分だけは見られるよ。」

「あの、この目もりって何ですか?」

「これは、標準的な魔法使いに就いた人類の数値と比較するためのものだね。これより低いと、習得も育成も難しいと考えてもらってかまわないよ。」

どうやら、メイレンはかなり幅広く属性魔法が使えるようだ。「自然の魔力に同調する」という性質を受け継いでいるのだろう。いや、それよりは、「描光」に引っ張られて、関係性の強い属性の適性が生えている… といった所かもしれない。

「ねぇねぇ、アステリアさん。私も測定してもらっていいかな?」

「あ、私も… 職業の違いがあるのかとか、ちょっと気になります!」

と、海でブレイオと鍛錬していたリーネさんがやってきた。そして、アヤも乗ってきた。

「了解。えっと、まずリーネさん… でいいかな?」

「いいよ。あ、もしかして、ほれちゃった?顔赤いよ?」

「そ そりゃ、美人のお姉さんがいたらね!こんな近くで接客することも無いし。」

リョーマたちの話だと、リーネさんは掲示板が盛り上がるくらいに美形らしい。なら、アステリアが戸惑うのも仕方のないことだろう。

それでも、さすがアステリア。ちゃんと測定を進めたようで…

「えぇっと… リーネさんは、土と風が強いね。あとは、平均より低いけれど、使えなくはないかな?」

「あぁ、なるほど。だいぶ前に見てもらった時とはちょっと変わってるけれど、だいたい似たような感じか~。魔法使いじゃないから、ちょっとした強化に使えれば十分なんだけど。」

「それで、こっちがアヤさんだね。やっぱりヒューマンだから月が無くて、それ以外は平均的。闇がちょっとあるのは、印術師の影響かな?」

「あ、闇魔法、伸ばしやすかったんですね。あまり考えたこと無かったです。」

「これくらいだと、現実には誤差レベルだから、あまり気にしなくていいと思うよ。」

女性二人が相手でもしっかり応対していたのだった。

なお、後ほど、アステリアからチャットで「うらやましい」発言をされた。なので、「まだ第7マップには行けないが、引き取ってもいいぞ。というか、たぶんマーキングされたぞ」と返しておいた。

「ところでアステリアさん。武器技能の適性なんかもわかったりしますか?メイレンの武器を考えたいんです。」

「武器ね。一応測定はできるよ。ただ、普通に持っている武器をいろいろ試してみれば、勝手に答えは出るんじゃないかな。」

アステリアが持つ技能では、筋肉の付き方や、体の動かし方から、そのフォームに合う武器グループがわかるらしい。職業に就いていると、その補正に影響されるらしいが、体格に合う武器であれば、それなりには使えるそうだ。

ということで、メイレンにいろいろな動きをしてもらったり、インベントリーに眠っていたてきとうな武器を振り回してもらったりした。その結果…

「重いものはダメ。あと槍や長剣のような長物も避けた方がいいね。筋力が低い影響もあるけれど、元が浮遊体だったから、遠心力に負けちゃうみたい。」

「残ったのは短剣、細剣、杖、弓ね。なんとなく予想はしていたけれど…」

「メイレンはどう思う?」

「わからない。アヤがくれたコレはダメなの?」

「ごめんね。それ、モンスターと戦うための武器じゃないんだ。」

メイレンがコレと言ったのは、おそらく、「精霊銀の彫刻刀」だろう。確かに下手な金属よりは強いが、武器として使うべきではないだろう。

「となると、使うなら杖じゃないか?と思うぞ。メイレンは魔法を主軸にするだろうし、受けにも使えるからな。」

「う~ん。そっか。でも、私、杖を使ったこと無いよ。どうしよう?」

「とりあえず今日は僕が教えるよ。これでも、魔法杖は使うからね。」

その後、メイレンは、杖の使い方や魔法の訓練を行なった。結果、メイレン自体にも適性があったようで、杖術はすぐに生え、順調に育っていった。

なお、現在、メイレンが武器にしている練習用の杖は、始まりの街で購入できる「樫の杖」だ。俺も、昔はこの杖の世話になっていた。白杖としての用途だけれど。