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ウェビンに来て3日… 俺たちは、技能の育成やギルドでの洗浄、浄化をこなした。
初日に予想した通り、この期間中、ギルドには大量のドロップ素材が集められた。その8割がゴブリンやコボルトの系統モンスターから入手できる武具類だ。
また、途中では休憩も兼ねて、松明無しでニノン洞窟へ突入し、暗視の獲得や感知技能の育成を進めた。なお、俺はどちらも関係なかったので、普通に魔法や祈祷術の育成を進めた。
そして、洞窟内のモンスターを使って、仙人掌マントの効果も確認した。結果、当初予想した通り、仙人掌マントによる対不意打ち効果が発動した後、正々堂々などの効果が発動することが確認できた。体当たりしてきたらしい洞窟コウモリが、はっきりわかるほどの反撃ダメージを受けていたからだ。
「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。今日からは、荒野でレベル上げをするぞ。先導してくれ。」
「了解しました。冒険者ギルド入口で合流後、西出口へ向かいます。こっちです。」
今日からは、西の第3マップにてメイレンのレベル上げを行なう。もし、良いダンジョンが見つかれば中に入ることも検討したい。
というわけで、ギルドの入口で合流後、西出口から外へと出た。
「W3 ウェビンの荒野へ入りました。」
「わぁ、だだっ広いね。」
「荒野だからね~。モンスターにも見つかりやすいから気をつけてね… って言いたい所だけれど、メイレンちゃん以外は問題無いのか。」
ウェビンの荒野は、商業都市ウェビンと、西にある砂漠地帯とを結んでいる荒野地帯だ。このため、植物は少ないらしい。
そして、ここに出現するモンスターは以下の通りだ。
赤狼: 体毛が赤い狼。炎属性などは無いが、フィールドを駆け回っているため遭遇しやすい。
職業コボルト系: ゴブリン種の上位で、より敏捷や器用さが増している。職業系なので、いろいろな武器を使ってくるが、爪を使った体術を混ぜてくることもある。魔法使い系もいて、炎を使ってくることが多い。
寄生花: 迷宮を囲む森で倒したことがある植物だが、こっちが本家。荒野の地面の色に似ている部位があるらしいため、まとめウィキではトラップ的な扱いを受けている。
モンスターセポリー: 過去に戦ったことのあるモンスター。寄生花と違い、はっきり視認できる。風属性の魔法を使う。
ランドピッグ: 大人サイズの豚。高めの防御力を持ち、土属性の魔法で攻撃してくる。接近時にはのしかかりからの踏みつけをしてくる。重量があるらしく、接近戦の攻撃力はかなり高い。
スケルトン系: 夕方~夜に出現。剣や弓などで攻撃してくる。なお、スケルトンが近くにいるとコボルトが寄って来ないらしい。
ナイトブル: 夜に出現する闘牛。角に炎を纏うことで、攻撃と光源の確保をこなす。このため、炎が突っ込んでくるように見える。
総じて、出現するモンスター自体は多いが、見た目通りなものが多いため、対策は容易なフィールドと言える。その分、隠れる場所が少なく、動き回るモンスターも多いためエンカウントはしやすい。
ということで、今日は以下の3チームに別れて荒野探索をすることにした。
- ユー、メイレン
- アヤ、ブレイオ
- リーネ、ラフィ
「ブレイオ。アヤさんを頼むぞ。近づいてくるやつらは自由に狩ってくれ。ただ、豚には注意な。」
「心得た。我が全て駆逐しよう。」
「メイレン。気をつけてね~。」
アヤをブレイオに預けてきた。そして、今日はメイレンと組むことになった。
「ユー。これから、どうすればいい?」
「ここのモンスターなら、お前の魔法で十分戦えるはずだ。だから、見つけたら光… いや、ライトバインドで牽制だな。」
「え?それでいいの?」
「この荒野のモンスターは、洞窟のモンスターより手ごわいぞ。そして、コウモリのように足止めをしてくれる仲間がいないから、お前自身の力で何とかしないといけないんだ。」
「ユーは、止められないの?」
「残念ながら俺は無理だな。行くぞ。」
俺はメイレンと一緒に荒野を進んでいった。
「ユー、武器持った獣が2匹こっち来てる!」
「コボルトたちだな。予定通り行くぞ。」
第1モンスターはコボルトたちなようだ。
「ガー!」
俺はそのまま進んでいくと、正面から声がした。そして、前からぼふっとした何かがぶつかってきた。
それで位置がわかったので、捕まえて投落!一撃で倒す。
直後、横から声がして何かがぶつかってきた。手を伸ばしたら、コボルトの腕を掴めたので、掴撃に移行して倒す。
「コボルトたちを倒した。メイレンは経験値100を獲得しました。」
最近、アヤには「経験の指輪」を着けてもらっている。おかげで、メイレンへの経験値がなかなかおいしい。
「ユー、凄い!強い!」
「メイレン、周囲にモンスターはいないか?」
「え?うん、いないよ。」
「そうか。とりあえず、モンスターはこんな感じに突っ込んでくるから、まず足を止めるんだ。そこからなら、魔法で狙い撃ちできるぞ。」
「うん。やってみる。」
そのまま進んでいくと、またメイレンがモンスターを発見した。今度は、赤狼3匹で、前後から、とのことだ。
「メイレン、バインドで後ろのやつを!」
「うん。ライトバインド!ライトランス!」
メイレンは、アヤとの練習の成果、それから器用が高いこともあり、しっかり狙って魔法を当てることができているようだった。種族的に、制御能力にマイナス補正受けているのに凄いな。
「こっちきた!」
「近い時は杖で流せ!あるいは跳躍から浮遊で逃げろ!」
たまに接近されることもあったが、浜辺などでしっかり鍛えたこともあり、耐え凌ぐことができていた。
「助かった。ユー、ありがとう!」
「こっちも助かっているぞ。セポリーもしっかり倒せたようだな。」
「うん。ユーがかばってくれるから、安心。」
メイレンはそう言っているが、単に、俺の後ろに隠れるなどして、盾にしているだけである。俺は仲間をかばったり、挑発したりする技能を持っていないのだから。
ともあれ、メイレンが安全に戦えているのは良いことだ。もし頻繁に狙われるなら、ラフィ辺りを呼び戻さなければならないだろう。
その後も、メイレンとのモンスター狩りを続けたが、途中でアヤがメイレンを連れて行ってしまった。何やら、スケッチすると良い場所を発見したようだ。
なので、俺はナビー先導の元、荒野内を散策してみることにした。
結果、大部分は踏み固められた土だったが、凸凹していて、雑草が群生している場所があったり、小山のように出っ張った場所があったりもした。
当然、そんな風に徘徊していると、いろいろなモンスターに絡まれた。が、レベル差の関係で勝負にならないので、戯れるほどの余裕があった。
のしかかってきたランドピッグを逆に持ち上げてみたり、体の泥を落としてみたりした。泥を落とした後の体表は、モチモチとした感触だった。
草むらで絡みつかれた寄生花を、これ幸いと葉っぱや茎を触って確認した。茎には弾力性があり、自由に曲げられることがわかった。葉っぱは硬く乾いていた。なお、触る過程で腕に絡みつかれたりしたが、引っ張ると簡単にはがせたので、結局ダメージは受けなかった。
拳士系と思われるコボルトを使ってスパをした。と言っても、こっちから攻撃すると一撃で昇天しそうなので、受け身の練習に活用した。
MP空っぽと思われるモンスターセポリーにも隣接できたので、捕まえて触れてみた。結果、球根っぽい所から足のようなものが生えていて、それで歩いていたことがわかった。葉っぱは柔らかかった。
よく考えたら、規制花もセポリーも、自分で戦った記憶が無かったので、こうした体験は新鮮だった。特にセポリーは、遠距離から魔法しか使ってこない上、普通は逃げるらしいので、近くで触れられるなんてミラクルだろう。