14-06 海底ダンジョンを覗いてみる

改定:

本文

翌日も、荒野での狩りとメイレンのレベル上げを進めていたのだが、途中でダンジョンが出現していた。

鳥の海底:

種別: ランダムダンジョン

階層数: 9

残り時間: 131:48:21

「海底か~。入ったら死んじゃうやつだよね?」

「だが、覗いてみるか?水守があれば入れはするぞ。しかも、モンスターがいないから水着で入れるな。」

「え?そうなの?それなら、入ってみたいかも?」

海底タイプのダンジョンは、溺れる、または、水圧で潰されるため、対策が必須だ。だが、中級の水属性魔法「水守」があれば、維持コストとしてのMPを対価にこの影響を防ぐことができる。

しかも、今回はモンスターがいない。正確には、第3マップダンジョンの「鳥」系統モンスターに、海底に適応できるモンスターがいないため、ポップしてもすぐ自滅するのだ。ランダム系ダンジョンは、たまに、こういうおかしな現象がある。

つまり、こっちが海底に適応できるなら、理論上はノーエンカウントで最奥まで泳いでいけることになる。ただし、途中で「ログイン制限時間」に抵触するためテント入りが必要なことは変わらない。当然、海底に適応したテントでなければ展開ができないので、挑むなら調達が必須である。

「海底か。ちょっと興味はあるね。でも、私、水守使えないよ?」

「アヤさん。以前、水守の指輪がドロップしていたよな?それをリーネさんに貸してやってくれ。で、俺たちは水守すれば良いだろう。」

「水守の指輪?あ、うん。あるある。そっか、これでみんなで潜れるね。あれ?メイレンは大丈夫かな?」

「ブレイオ、ラフィ、メイレンは種族的に大丈夫なはずだな。だが、ゴーレムは、おくたんとフリーンは行けるか。ルナーはダメだな。」

ゴースト、精霊、妖精などの種族は、魔力で体を構築している設定なため、海底でも生存は可能だ。ただし、「水泳」系統の技能が無ければ、まともに活動することはできない。

幸い、ブレイオ、ラフィ、メイレンは「遊泳」技能まで育てているので、陸上と比べると戦闘能力は低下するが、このダンジョン内で活動することは可能である。

一方、ゴーレムは、呼吸不要なため溺れはしないが、水圧の影響はしっかり受ける種族である。故に、海底で活動するためには、対応する技能が必要だ。

おくたんが大丈夫なのは、「蛸の体」と「再生」技能を備えている影響だ。水中での影響を「蛸の体」が軽減し、それでも受けたダメージを「再生」が修復してくれる。

そしてフリーンは、模倣で「水守」を使って凌げるだろう。彫刻刀に憑依しているため、そのままでも大丈夫だとは思うけれど…

なお、戦闘能力の低下を完全に無くすには、「水中活動」の上位技能が必要だ。従って、俺たち人類組も弱体化している。

というわけで、水着にパージし、「水守」をかけた上で、俺たちはダンジョンへと突入した。

「ダンジョン 鳥の海底 に入りました。現在1層です。」

「あ、もう水の中なんだ。でも、苦しくも何ともないね。」

「だな。ブレイオとラフィはどうだ?」

「我は問題無い。水の中故、身動きは取りずらいが、それだけだ。」

「ん。私も。動きずらいけれど、動ける。」

「メイレンは、大丈夫?」

「うん。動きずらいけれど、大丈夫だよ。アヤ、捕まっていい?」

「いいよ。一緒に探索しようね。」

やはり、ブレイオ、ラフィ、メイレンも大丈夫なようだ。

「いやぁ、私もついにダンジョン巡回者か。水守が使えなかったから、あきらめていたんだよね。」

「海底以外のダンジョンを一通り探索したのか。さすがだな。」

「お?さすがユーさん、わかっちゃうか。ということだから、しばらく潜っていたいんだけど良いかな?」

「水泳系が育つから問題無いぞ。ただ、MPには注意な。」

リーネさんが話に挙げた称号「ダンジョン巡回者」は、全ての系統のダンジョンで、一定時間生存、活動することで獲得できる記念照合だ。この称号を持っていると、ダンジョン踏破報酬にボーナスが乗る。また、Aランク冒険者になるための条件にも指定されている。

俺も同じ称号を得たいと考えている。だが、まだまだ先になるだろう。例えば、火山、砂漠、谷、雪原などのダンジョンに出会えていないからだ。

「じゃ、ラフィちゃん、今回も一緒に行くよ。」

「それがいい。ブレイオは、俺と来るか?一人で見て回るか?」

「少し海の中を見て回ろう。」

「わかった。何かあれば念話で頼む。」

海底で活動するに当たって、もう一つ注意するべきことがある。それは、一定以上離れると対話ができなくなることだ。至近距離なら、「水守」の効果で声を届けられるのだが、1メートルも離れると、声での対話は困難になる。

というわけで、以降は念話を活用する。念話は5メートル程度までしか届かないが、ちゃんと対話ができる。

(ナビー。この層の天井へ向かうから先導してくれ。)

(了解しました。天井はこっちです。)

俺は、ナビーの先導に従い、天井の方へと泳いで行った。結果、体感で10メートルくらい進んだ所に、天井はあった。

天井に触れてみると、岩のような壁になっていた。今触れている部分はザラザラしているので、あまり触っていると手が切れるかもしれない。

そのまま、天井に沿って横方向に移動してみた。すると、他の部分もざらついていたが、凹凸や突起物の類はほとんど無かった。少し丸みを帯びた箇所はあったが、「ほぼ平らな天井」と言って良さそうな印象だった。

続いて、底の方向に泳いでいった。すると、天井と違って、少し凸凹とした床になっていた。あと、ヌメっとした何かに触れて、触鑑定ができた。

海苔:

種別: 素材・植物

説明: 海底で採取できる海藻の一種。岩に張り付いているため、はがす際には工夫が必要。

なるほど。これを乾かすとおにぎりのお供になるのか。だが、岩にぴったりとくっついているように感じられたので、はがすのは難しそうだ。なら、専門家に聞いてみよう。

「おくたん、これ、はがしてみてくれ。」

というわけで、どこかにいたであろうおくたんを送還して正面に再召喚。俺が触れていた海苔をはがしてもらった。

結果、海苔は岩から浮かぶように持ち上がった。その乗りの先に触れていくと、おくたんの足と海苔がくっついていた。蛸の吸盤のような原理だろうか?

正直、岩から削り出すのかな?と思っていたので予想外だった。が、実際、俺のインベントリーには、既に「海苔」を含めた素材がいくつも入っていた。しかも、ちゃんと能力値に見合った高品質な海苔だ。

その後、少し海底に沿って移動もしてみたが、所々に岩があるものの、こちらも凹凸は少なかった。海流のようなものを体で感じ取ることはできなかったが、水深が深い所は表面が削られて平らになるらしいので、その類なんだろう。

なお、まとめウィキによると、「海底」タイプのダンジョンはループ構造なため、「壁」は存在しない。直径1kmくらいの広場のどこかに放り出された状態からスタートし、別のどこかにある魔法陣を見つけて、次階層へ移動できる… そうだ。

2時間ほど海底を散策した後、俺たちはダンジョンから脱出した。貴重な海底の体験はできたし、おくたんが採集をしまくってくれた。ラフィ達も採集したようだ。

「海底、不思議だったね。いろんな景色が描けたよ。」

「お、さすがアヤさん。どれも鮮やかだね。あれ?この不思議な物体は何かな?」

「それ、海藻が絡まったおくたんちゃんだよ。面白い形でしょ?」

「あれか~。海藻を吸盤でピトッてやってたよね。私も採集を試したけれど、アレは無理だったよ。」

「うん。途中まではキレイにはがせるんだけど、千切れそうになるんだよ。おくたんちゃん、凄いね。」

岩にくっついた海藻の採集はなかなか難しく、そして、おくたんのやっていた方法は驚異的であったようだ。

なお、ログアウトした後、まとめウィキで確認した所、「人類が海藻を安全に採集する方法」は、「集土」で下から持ち上げるか、「育緑」で海藻を強化することらしい。そして、おくたんがやっていた手法も、普通に推奨されている方法だった。スライム系統でも同じことができるらしい。