14-07 W3D 鳥の海底

改定:

本文

海底探索を楽しんだ後、「せっかくだから最奥まで行ってみようよ」ということになった。なので、その日の内に、錬金術店で海底に対応したテントを購入した。

水守のテント:

種別: スポットアイテム

説明: 敵対するモンスターがいない時、野外で休息するスポットを作ることができる。設置から一日経過で消滅する。水中での展開が可能。

品質: 4/10

価格: 3000p

上記のテントは、ソルットの錬金術師セラさんに作ってもらった。性能的に仕方ないとはいえ、単価が通常のテントの4倍近くもするため、第3マップのランダムダンジョンで使うべきものか?というと微妙な所だ。しかも、そのテントに入ってやることは、「ログアウトしての休憩」である。

しかし、海底タイプのダンジョンを探索するにおいて、このテントは最も有効なアイテムだ。何しろ、その名の通り、テント自体が、「水守」の魔法がかかるので、俺たちは魔法を解除して休むことが可能だからだ。

なお、購入時に、セラさんから「テントから出る時に水守の使用を忘れないようにね」と念押しされた。「水守」はテントにかかっているのだから当然なのだが、うっかりやらかすプレイヤーはいるものだ。まとめウィキでも注意喚起はされている。

「ダンジョン 鳥の海底 に入りました。現在1層です。」

準備ができたので、再びダンジョンにやってきた。

そして、まとめウィキに記載されていた手段に従って、次階層へ続く魔法陣の探索を始めた。その手段とは以下の内容だ。

  1. 、索敵魔法を用いると、魔法陣の可能性がある場所がわかる。なお、魔法陣を正確に発見できる精度は技能レベルに依存するため、現状では、「ありそうな方向」とか、「いくつかの候補」がわかる程度。
  2. 俺とアヤは2手に別れて魔法陣を探す。発見できた方が、フレンドチャットを用いて相手に連絡する。
  3. 目視で探す場合は、遠視が有効。なお昼間であればダンジョン内も明るいので暗視は不要。

チーム編成は以下の通りとした。

  1. ユーチーム: ユー(連絡), ラフィ(探知), リーネ(捜索)
  2. アヤチーム: アヤ(連絡・探知), メイレン(随行), ブレイオ(護衛)

俺のチームは、ラフィの索敵魔法で索敵し、可能性のありそうな場所にリーネさんを先行させる方法を取る。彼女には「遠視」技能があるので、先行してもらった方が効率的だ。もちろん、俺たちも追いかけるわけだが。

一方、アヤのチームは、彼女自信が索敵魔法を使い、その方向に移動してもらう。ブレイオは、何かあった時の護衛役だ。

「こっちに魔法陣あったよ。ユーさん、来れる?」

探索を始めて10分後、アヤからチャットが届いた。どうやら、一発で見つかったようだ。

俺とアヤは現在同じパーティに所属しているので、ゲームのUIを用いてパーティメンバーの位置を知ることが可能だ。

通常は、挑んでいるダンジョン等のマップが共有され、お互いの位置が点で表示されるらしい。もし、俺側が魔法陣を発見できた場合は、アヤはこれを頼りにやってくるだろう。

では、今回のケースではどうするのか?と言うと…

俺は、リーネさんに対し「守の古祈」を使用。この効果によって、彼女に「俺が呼んでいる」ことを伝え、戻ってきてもらう。

(ユー。リーネ、戻ってきた。)

(ナビー。パーティメンバー アヤのいる方向へ直進する。先導してくれ。)

(了解しました。パーティメンバー アヤの方向はこっちです。)

ゲームのUIに相手が表示されているのならば、それはナビーによる追跡が可能ということだ。あとは、ナビーの先導に従って泳いでいけば良いのである。

もちろん、俺はパーティメンバーであるリーネさんに対してもナビーで追跡することが可能だ。だから、先行させた彼女を泳いで追いかけることはできている。

なお、索敵魔法の精度はまだ正確ではないため、向かった方向に何も無いこともある。

(ユー。リーネ、戻ってきた。)

(そうか。アヤさんはまだ見つかっていないみたいだから、リーネさんが見つけられたかどうか聞いてくれ。ダメだった場合は、再び索敵魔法な。)

「こっちは無かったよ。ラフィちゃん、次はどっちかな?」

「ん。あっち。強い反応ある。」

「ほ~い。じゃ、行ってくるから追いかけてきてね。」

こんな具合に、リーネさんをあちこちに飛ばして探すような状態になっている。そして、「合流までのタイムラグを減らす」という大義名分の元、俺たちはそれを追いかけ続けたのだった。

え?本音は何か?もちろん、「技能がすくすくと育つ」ことだ。俺の場合は「水属性魔法」、「水中活動」、「古式祈祷術」、「念話」などが育っている。アヤやラフィは、「広域索敵魔法」なども育っているだろう。

結局、夕方少し前には7層に続く魔法陣まで到達することができたので、その日はテントで休むことになった。時間には余裕はあったが、海底での活動が続いたので、早めに休むべきだろう、という判断だ。少なくとも、アヤは「楽しかったけど凄く疲れた」と言っていた。

そして、翌日… 俺たちは、最下層に続く魔法陣の前に到着した。

「回復もOKだよ。まぁ、レベル的に問題無いと思うけどね。」

「えっと、最下層はちゃんとモンスター出るんだよね?」

「出るはずだ。水守の維持も大変だから、倒せそうなら手早く倒そう。」

「鳥の海底 最下層に入りました。」

「わぁ、キレイ!」

「まだボスは出ていないなら、先にスケッチを済ませたが良いぞ。機動力のあるヤツが出てくるだろうからな。」

「あ、そうなんだ。わかった。」

アヤとメイレンは相変わらずだった。各階層でいろいろと描いたらしい。

「ユーさん。どんなモンスターが出るか、知っていそうだね。教えてよ?」

「ゴースト複合のシャドーダイバー系統、妖精複合のセイレーン系統、順当なマリーンイーグル系統、あとはメタモニックオクトパスが鳥に変化してくるそうだ。」

「なるほど。系統というのは、上位種で、体が大きいものということかな?」

「それもあるし、ジェネラル系が取り巻き付きで襲ってくるケースもある。」

「とりあえず、ユーさんを放り投げればどうにかなりそうだね。あれ?海底に適応した翼竜はいないかな?鳥系のダンジョンで戦ったことがあるよ。」

「亜竜種だな。アレが出てくるのはレベル30エリアからだそうだ。」

「言われてみると、私が遭遇したのは、水晶の洞窟に出たダンジョンだったね。まぁ、一応覚悟はしておくよ。海底で万全な亜竜種とバトルというのは厳しいだろうし。」

リーネさんと話をした通り、海底に適応した鳥系のモンスターは複数種類確認されている。また、翼を持つ亜竜種にも遭遇することがあるのだが、素材の希少性もあって、第3マップのダンジョンで出会える可能性は無い。

それはともかく、リーネさん、また開幕直後に俺をモンスターに向かって投げ込むつもりらしい。まぁ、俺が死ぬ可能性が無ければ、その戦略は最良だろう。アヤたちが狙われるリスクを下げられるわけだし。

その後、スケッチも終わったようなので、俺が先頭になって前進した。その結果…

「鑑定できたよ。マリーンイーグルジェネラルと取り巻きたちだね。ということで、ユーさん、行ってらっしゃい。」

その言葉の後、俺はリーネさんに投擲された。そして、何かにぽふっとぶつかった。なので触鑑定…

マリーンイーグルジェネラル:

種別: モンスター・ダンジョンボス・鳥

レベル: 15

HP: 100%

状態: 敵対

説明: 海中の魚を取るために進化を遂げた。筋肉のように発達した羽は、水中でも自身の力を衰えさせない。将の器を持ち、従えた兵と集団を形成し、獲物を狙う。

識別:

体力: 450

魔力: 60

筋力: 45

防御: 30

精神: 30

知性: 15

敏捷: 45

器用: 30

属性: 風,水

弱点: 雷,土

どうやら、まっすぐにジェネラルの元へ投げ込まれてしまったようだ。となると、周囲の取り巻きから集中砲火されるだろう。なら、穴だらけにされる前に倒してしまおう。

幸い、俺にとっては最良のモンスターが出てきてくれた。マリーンイーグル系統は近接戦闘系のモンスター、且つ、攻撃的な思考であるため、逃げられる心配が無いからだ。

ただし、巨大種が出た場合は俺でも即死する可能性が高いため心配していた。人類種だと、丸呑みにされる可能性があるからだ。特殊判定らしいので、「正々堂々」が効果しない可能性が高いと考えている。

なお、最悪なのはセイレーン系統だ。遠距離から魔法や歌唱で攻撃してくるのと、近づくと逃げるからだ。取り巻き付きで魔歌を連発されたら、「音抵抗」を持たないアヤ、メイレン、リーネさんは死に戻るかもしれない。

とはいえ、それでも勝利できるだろう。どこにいるかわからない位置から魔歌で攻撃されている状況なら、「真理の枷」が貯まるからだ。

ということで、マリーンイーグルジェネラルを捕まえたので、溢気法からボッコボコにして倒した。知性が低かったので、魔充填、纏雷から修羅拳を打ち込んだら終わった。

その後、俺とアヤは報酬を選択した。リーネさんはW3で別のダンジョンを攻略したことがあったため、報酬は無かったようだ。

俺に提示された報酬は、「空気のペンダント」、「敏捷の種」、「羽の帽子+1」、「深海岩塩」だったので、「敏捷の種」を選択した。

「空気のペンダント」は、水中での呼吸時間が伸びる効果があるが、水圧への抵抗は無い。よって、「水守」を使う必要があることには違いがなく、それなら最初から酸素問題も解決できる「水守」で十分だ。

「羽の帽子+1」は、鳥の羽から作られた軽帽子「羽の帽子」に特殊な効果が宿っている防具だ。おそらく、属性攻撃に対する耐性が増えているのだと思う。ただ、ここが第3マップのダンジョンであるため、良くて「第5マップで通じる?」程度の性能だろうから、あえて選択する必要は無い。

「深海岩塩」は、料理プレイヤーにとっては希少素材ではある。だが、第7マップ程度の実力のあるプレイヤーが、ソルットの海から海底まで潜れば採集できるアイテムだ。餃子饅も普通に料理で使うことがあるそうだ。

一方のアヤは、「観鷹の印」を獲得した。視界を共有できる鷹を召喚する索敵系印術だ。まとめウィキだと、 E7 で、あることをすれば手に入るものだが、手順が面倒なのと、他の選択肢が微妙なことから、ここで得ることが望ましいだろう。

その他に提示されていた選択肢は、「空気のペンダント」、「飛行の技能書」、「呪われた幻鳥の羽」だ。

「飛行の技能書」は、ヒューマンだと全く意味が無い技能だ。メイレンなら使えるのだが、「浮遊」や「跳躍」があれば、あえて選択するメリットが少ない。メイレンに飛び回ってもらうなら、印術で召喚した鷹を使った方が優位でもある。

「呪われた幻鳥の羽」は、浄化すれば「幻鳥の羽-1」になるだろう。ただ、アインステーフで同程度の素材を使った装備類が購入できるので、あえて選ぶ意味が乏しい。そもそもこの人、「幻鳥の羽刷毛」という画材を既に持っていた。