14-09 アインステーフ探索と楽しい追加イベント

改定:

本文

「新たな歴史を刻む街 アインステーフ に入りました。」

翌日、俺はイベントで訪れた旧迷宮都市、現アインステーフに転移した。

先日、検証班カナミーから聞いた情報は、既にまとめウィキにも追加情報を込みでまとめられていた。要約すると以下の通りだ。

  • 別の大陸に現存している街であり、ゲーム的にはエクストラマップ扱いとなる。
  • 冒険者ギルド以外では、宿屋、武具屋、雑貨屋、錬金術店、魔生具店、露店、生産職向けの市場などがある。商品ラインナップは、プレイヤーがイベントで訪れた時と同じ。
  • 街の四方には草原、森、山、地下道がある。出現するモンスターの分布やレベルは、イベントで訪れた時と同じ。なお、その先には柵があり行くことはできない。
  • 採取物のグレードも、イベント時と同じだが、内容は変わっている。イベント中は「魔力を帯びた素材」が主だったが、現マップでは、魔力を含まない素材の方が多い。
  • 街の四方の各フィールドにはランダムダンジョンが出現する。レベル帯を含め、ダンジョン内のルール等は通常マップと同じ。
  • 「古の魔法陣」などイベントに関連するスポットには隠し要素あり。プレイヤー毎に違っており、現在検証中。アイテムや技能に関わる何かが多い。

「ナビー。この街の案内はできるか?」

「新たな歴史を刻む街 アインステーフの情報がありません。ただし、類似マップ、迷宮都市からのデータを参考とすることは可能です。」

これもまとめウィキ通りだった。この街、システム的には迷宮都市とは違うマップであるらしい。なので、ナビーの機能を十全に活用するためには、いつも通り図書室へ向かう必要がありそうだ。

「ほ~い、遅くなったかな?」

「ん?リーネさんか。一人で転移できたようだな。」

「そうだね。これなら、別行動していても問題無いね。」

と、離れた所からリーネさんの声がした。話ぶりから、先に転移して街中を散策していた様子だ。

それはそうと、リーネさんは予想通り、この街への単独での転移が可能だったようだ。アインステーフに転移できる条件は、称号「新たな始まりを刻む者」の効果であり、彼女も取得していたからだ。

それと、イベント中、パーティを解除できない原因は、「プライベートビーチなどと似たような処理がされていた」説が濃厚とのことだった。「一人でプライベートビーチに入れない」ということは、「一人でプライベートビーチからも出られない」ということでもあるので、イベント内でパーティ分裂できたらNPCを閉じ込めてしまうわけだ。

「それで、今日は装備の更新だったよね?さっそく行こうよ。」

「ただ、先にギルドの図書室に行きたい。良いか?」

「いいけど。ユーさん、本の匂いが好きな人なのかな?いつも図書室にいる気がするんだ。」

「あそこには、周辺を旅行するために必要な情報があるからな。まぁ巡礼みたいなものだ。」

ということで、リーネさんに引っ張ってもらい、冒険者ギルドの図書室へと向かった。

「ここが図書室だよ。私は、ちょっとギルドの方に行ってるね。」

「助かる。」

俺はナビーのアップデートを済ませた上で、図書の触鑑定を進めた。あと、ブレイオ、ラフィも召喚して、てきとうに本を読んでもらうことにした。

結果、鑑定した本自体に特別な何かは無かったが、「触鑑定」がLv40になり、「触部位拡張」ができるようになった。これは、手以外の部位でも「触れている」と認識できていれば鑑定が可能になる能力だ。

「ブレイオ。てきとうに本を取って、背中に押し当ててくれ。技能を試したい。」

「承知した。主人、どうだ?」

「行けるな。」

「ん?私もやりたい。」

試しに、ブレイオに本を背中に押し当ててもらった所、その本の触鑑定ができた。複数の本を押し当てた場合も個別に触鑑定はできたが、本を2札重ねた場合には、背中に触れていない方の本は鑑定できなかった。

続いて、ラフィに足を握ってもらい、これも触鑑定ができた。膝当てくらいであれば、防具の上から触れても鑑定できるようだったが、「魔鉄の戦闘靴」の鉄板の上からは鑑定できなかった。今の所、分厚い革や鱗、金属を通すと難しそうだ。ただ、「足の裏は感覚が敏感」だからなのか、立っている床は靴越しに鑑定できた。

最後に、壁や扉、本棚に寄りかかって鑑定を試みた。結果、「壁」「扉」、「本棚」などという鑑定結果になった。さすがに、本棚に寄りかかって、中の本を順次、あるいはまとめて鑑定することはできないようだ。

いずれにしても、手で触れていなくても鑑定ができるようになったのは便利だ。特に戦闘中、どこからか飛んできて、体にぽふっと当たった物体が鑑定できるようになるかもしれないのだから。

なお、「簡易鑑定」については、従来通り、手で触れたものだけなようだ。確かレベル50辺りでその制限が緩和されたと思う。解放したらしたで、通知が多すぎて大変かもしれないけれど。

その後、俺たちは街での買い物を進めた。

まずは、俺自身の強化だ。頭装備を更新した。あと、アクセサリーも更新した。

  • 銀編の合革帽子 → 聖銀編の魔銃革帽子 (上位互換、特に魔法防御強化)
  • 守り石の首飾り → 守り石の首飾り+1 (耐久値の低下を抑制する能力が上昇)
  • 魔樹の指輪 → 炎晶石の指輪 (炎属性の強化に変更)

表記上のスペックだと、そろそろ「聖銀の小手」は怪しくなってきた。ただ、「真理」テキストが付いているため、防御性能が底上げされている気がする。まぁ、アインステーフが無ければ聖銀より上は無いことになっているので、小手は現状維持で良いだろう。

なお、これから向かう「E6 イールの林道」で「魔界の黒帯」を使う予定は無い。全能力弱体というハンデを背負えるほどの余裕は無いと考えているからだ。

続いて、ブレイオの装備だ。霊体で使用できる装備があったので追加した。

  • 腕 → 霊骨の小手 (筋力増幅効果あり)
  • 膝 → 霊骨の膝当て (敏捷増幅効果あり)

ブレイオの装備として選択できるのは、霊布、霊骨、その他魔法的な装備類だ。今回は、防御の実数値が欲しかったので、霊骨系統を選択した。

最後にラフィの装備だ。防具が第3マップ装備だったので、ガッツリ更新した。

  • 頭 → 霊布の頭飾り (ダメージ軽減、魔法防御が高め、精神、知性補正)
  • 水中花の小手 → 妖精のリストバンド (ダメージ軽減、器用、敏捷補正)
  • 膝 → 黒猫の膝当て (ユーと同じ装備。脚力増幅)
  • 合革の靴 → 魔銃革の靴 (上位互換)
  • 水中花の靴下 → 霊布の靴下 (水属性耐性は失われたが、全体的に上位互換)

今回、ラフィの装備から植物系素材の要素を外すことができた。

「樹木殺し」技能があると、自身の植物素材装備にも悪影響が出る。このため、特に「水中花」系統の装備は、劣化が早かったり、防御効果が衰えたりしていた。それでも装備していたのは、当時のレベル帯だと最適解だったからだ。

「ブレイオ、ラフィ。どうだ?着心地は良いか?」

「うむ。少し慣れは必要だが、霊体でも邪魔にならないのが良い。」

「ん。私は、すごく良い。体が軽くなった。」

なお、全員合わせて40万ほどの金額になった。お金がかかる武器や胴装備が無かったのだが、それでも所持金の6割以上が溶けた。

では、最後に、例のイベントスポットとやらに行ってみよう。俺の場合だと、おそらくあそこだ。

「みんな、良い感じに装備整ったね。じゃ、さっそく林道に行く?」

「いや、最後に一つ、行きたい所がある。過去にアンデールの僕と戦った場所に何かあるようでな。」

「お、そういうのあるんだね。でも、さすがに覚えてないよ?」

(ナビー。迷宮都市で、アンデールの僕と戦った後に移動した地下室への入口へ先導できるか?)

(迷宮都市の記録を参照、先導できます。こっちです。)

「何とかなると思う。ついてきて欲しい。」

ナビーの先導に従い進んで行った。そして…

(入口の床はここです。)

地面からナビーの声がしたことで、位置判明。確か、この床に取っ手の類は無かったはずだが、まとめウィキ通りなら、鑑定するか触れれば良いとのこと。なので、俺は該当の石板に触鑑定をした。

床石

種別: オブジェクト

説明: 新たな歴史を刻む街 アインステーフの石床の一部。この床は地下へ通じているが、地上から開けることは困難である。

「条件を満たしたため、フィールドが変化します。」

「お?石板が勝手に盛り上がっていくよ。」

すると、ナビーの声の辺りから音がした。リーネさんが言う通りなら、入り口が勝手に開いたようだ。実際、杖で確かめると、ちゃんと階段になっていた。

「アインステーフ 歴史眠る地下室に入りました。」

進んでいくと、イベントの時に感じた小部屋に似た感覚の場所にたどり着いた。

「ん?ここ、覚えがある。」

「闇の力が濃いな。だが、何も無いぞ。」

「何も無い?机もか?」

「そうだね。見えている限り、何もない石の部屋だよ。」

俺はそのまま前進して行った。すると…

「エクストラボス アンデールの僕 レベル40 との戦闘が可能です。挑戦しますか?」

俺への報酬は、エクストラボスとのバトルだった。しかも、なぜかレベルが上がっている。

「え?このメッセージ、例の悪魔は滅びていなかったということかな?」

「わからないな。とりあえず本人?いや、本悪魔にでも聞いてみるか。きっと強敵だぞ。」

そう言いつつ、俺の中では一つの感情が沸き上がっていた。

「ククク。来たか!裁定者、いや、強き拳を持つ者よ。」

「俺をそう呼ぶか。なら、一つ聞きたい。アンデール様はどうなったんだ?」

「貴様らが滅したのであろう。残念ながら、我には残滓を懐かしみ、この場に留まることしか適わぬ。」

「そうか。じっとしているのは暇ではないのか?」

「人の時間で測るとは愚かな。我らには一瞬のこと。だが、その隙間を、貴様との戦いで埋めるとしよう。」

どうやら、イベント内で戦った時の影響を受けているようだ。おかげで、状況説明をしてくれて助かる。

それはともかく、アンデールの僕とのスパ、いや、戦闘が始まった。

アンデールの僕:

種別: モンスター、エクストラボス、悪魔

レベル: 40

HP: 100%

状態: 敵対

説明: かつて、この地を闇に沈めんとした大悪魔アンデールの僕。主の再臨に向けて暗躍を続けてきた。

識別:

体力: 8000

魔力: 160

筋力: 160

防御: 160

精神: 80

知性: 80

敏捷: 80

器用: 80

属性: 闇

弱点: 光

戦闘スタイルは前回と同じだった。むしろ、前回の戦闘の記憶があるのか、あるいは本能なのか、最初から俺に対して近接戦闘を仕掛けてきた。そこで触鑑定できた結果が、上記の通りだ。

「ククク!貴様も鍛えていたか!良い、実に良いぞ!」

「そっちもずいぶん鍛えたようだな!連気拳!」

「いやいや!攻撃力、防御力が驚異的だよね!しかも、上級技じゃないかな!」

「フン!貴様の僕共もやるではないか!」

そう言いつつ、アンデールの僕は、俺だけを狙っている印象だった。ブレイオ、ラフィは接近戦だと厳しいので魔法と補助、リーネさんは遊撃を仕掛けていると思う。逆に言うと、俺がやられると、普通に負けるだろう。ブレイオとラフィは消えてしまうだろうし。

「クク!やはり本気を出さねば相手にならぬか。次こそ、貴様を砕いて見せようぞ!溢気法!」

「なら、こっちも溢気法だ!」

「げ!それダメなやつ!ユーさん、任せたよ!」

そして、前回と同様にスーパーモードまで使ってきたので応戦。というか、能力1.5倍にクールタイム半減が付くと、リーネさんでも止めることはできないだろう。ブレイオとラフィは当然被弾自体がNGだ。

それにしても、相変わらず律義な悪魔だ。普通、こういうのは取り巻きから処理するべきだと思うのだが、ブレイオたちの魔法は迎撃するだけに留め、ひたすら俺に向かってきていた。

「ククク!まだ足りぬか!貴様、また来るが良い!破砕拳!」

「スパに来いというなら、しばらく世話になっても良いな!超聖拳!」

「アンデールの僕を倒した。経験値を8000獲得しました。」

「ユーはレベル39に上がりました。」

「ユーの技能 物理抵抗 が 物理耐性 に進化しました。」

「ユーの技能 不動の守り が 不動堅固 に進化しました。」

「ブレイオはレベル37に上がりました。」

「ラフィはレベル34に上がりました。」

「エクストラボス アンデールの僕 の討伐に成功しました。報酬が授与されます。」

こうして、1時間ほどのスパは終わった。新装備の慣らしにもなったし、実質的に第6マップのフィールドボスと同格の戦闘だったので、経験値が美味しかった。

さらに、今回はエクストラボスの討伐報酬が出た。

技能消去の秘薬

種別: 薬品

説明: 奇妙な気配を纏った薬品。使用すると、体に宿る技能を一つ消去することができる。なお、消去した技能を再取得することは適わない。

品質: 10/10

上悪魔の角:

種別: 素材

説明: 上位の悪魔が長い年月をかけて魔力を宿らせた角。濃厚な闇の力を持っている。

品質: 6/10

獲得した報酬はリーネさんも同じだった。この感じだと、「アンデールの僕」の共通固定報酬なのかもしれない。

「技能消去の秘薬」は、主に、望まぬ技能を得た場合や、デメリットの強い技能を消す用途で用いられる。今の所、そういうことにはなっていないが、俺の場合だと、「鈍感」で抑えられているはずの技能が生えてしまった時や、白杖の使い過ぎで「杖術」が生えた時に考慮する感じだろうか…

物理耐性

説明: 耐性の一種。物理攻撃で受けるダメージを軽減する。防御上昇(小)。

不動堅固

説明: 自身の守りを強固にする技能。立ち止まっている時、被ダメージ軽減(中)、ひるみ耐性(仲)、身体異常耐性(小)、体力上昇(微)。

そして、スパの影響か、「物理抵抗」と「不動の守り」が進化してしまった。これはとても美味しい。