14-10 E6 イールの林道

改定:

本文

「E6 草木に飲まれた地 イール に入りました。」

買い物とスパ、その後の回復を終えた俺たちは、ついに目的地、E6に戻ってきた。まぁ、アインステーフから転移してきただけなので、仰々しいものではないのだけれど。

「主人。ついに、この先に挑むのだな。」

「そうだ。とはいえ、レベル上げが目的だから、今日は近場で狩りの予定だぞ。」

イールに到着したのは、ゲーム内で言えば2カ月近く前だった。この間は、ラフィの育成をしたり、イベントに乗り込んだりしたのだが、そのおかげで、育てたかった技能をしっかり育てることができた。

「ユー。この先、行くの?」

「お?ラフィは、何か気になるか?」

「ん。この森、私たちを誘っている気がする。」

「ここは、モンスターに滅ぼされた上に、草木に飲まれた地だ。だが、臆することは無いぞ。この森の先に、人が住んでいる街や村はたくさんあるからな。」

「そうなの?」

「その通りだよ、ラフィちゃん。この森は怖い所かもしれないけれど、それを乗り越えていった人々はたくさんいるんだ。まぁ、私はまだ超えたことが無いんだけどね~。」

ということで俺たちは森の中へと踏み込んだ。

「E6 イールの樹海 に入りました。」

さて、いつも通り、出現するモンスターの整理をしよう。俺とブレイオだけでは厳しいと判断した理由だ。

森渡りす: 保護色になっていて視認しずらい栗鼠系のモンスター。立体起動や特攻看破を持ち、風属性の魔法や投擲、前歯などで攻撃してくる。またHPが減ると、アイテムを盗んで逃げようとする。

ヘビーディア: 足が発達した鹿。突進や踏みつけで攻撃してくる。悪路走破系の技能を持っているため、バインドや足払いがほぼ効かない。

甲殻蟷螂: 硬い甲殻を持つ蟷螂。近接での鎌術で攻撃してくる。役割としてはタンクだが、特攻看破を生かして、防具の隙間などを狙ってくるため、正面から近接戦闘すると消耗が激しくなるらしい。

シードグール: 「寄生系の植物に乗っ取られてさまようようになった」という設定のゾンビ種。ある程度近づくと、恐怖や暗闇効果のある「ゾンビブレス」を吐いてくる。

スリプルバタフライ: 所々にある花畑エリアに出現。眠り粉を連発してくる。またHPが減ると吸血もし出す。周囲のモンスターを引き寄せる場合があるため、睡眠耐性の先生にするには工夫が必要。

水草の性: 水、木属性複合の精霊の眷属。水や木属性の魔法で攻撃してくる。水、風、炎、光、木、氷という6つの属性を無効化するが、残り4属性が特攻になっている極端なモンスター。

トレントウォーカー: 通常は木に擬態しているが、一定範囲まで近づくと動き出す。仲、遠距離では木属性や風属性の魔法を使うが、接近時にはよく撓る幹をたたきつけてくる。

ハンマープラント: ヒマラン大草原にもいた植物。茂みの中から弦を伸ばしてくる。

森妖精: 公式イベント中に通った森で戦ったモンスター。バインド、超回復、ドレイン持ちのため倒すのに時間がかかる。もたついていると複数匹寄ってくる。

停滞の嬢王蜂: 虫の闘技場で戦った危険なモンスターの一種。腐り蜂の群れを放ってくる。また、未了効果のある甘い香りを用い、誘い出した相手のHPを吸ってくる。

「4匹の気配だね。シードグール2匹、ヘビーディア、森妖精かな?」

「ラフィ、吹雪で行けるか?」

「ん。」

「ブレイオは、ディアに魔法な。水弾でびしょぬれにしてから雷だ。」

「承知!」

「それなら、私は森妖精だね。ユーさんは、とりあえず前に行けば誰かしら当たるんじゃないかな?」

「てきとうだな。いや、事実だけれど。」

さっそく、戦闘は始まった。

とはいえ、こちらには秘密兵器とも言えるラフィがいる。「樹木殺し」により、植物の性質を持つモンスターに有利だ。そして、俺たちは能力的にも十分に育っている。

「オーン!ドドドドド!」

「ぬ、させん!」

聞いたことのある鹿野鳴き声が突っ込んできた。そしてブレイオが反応、ズドーンという音がして吹っ飛んだ。落雷の魔法をうまく命中させたようだ。

ヘビーディアの弱点は水属性だ。しっかり踏みしめる足はあるが、ぬかるんだ地面は苦手であるらしい。そして、水をかけた後なら、雷属性でのダメージ増加が狙える。

俺は「雷の鉄拳+1」にパージ、音を聞きながら近づいていった。すると、正面から汚れた水のような臭いがしてきた。さっき聞いた通りのモンスターしかいないなら、きっとシードグールの臭いだろう。

そのまま歩いて行くと、前方から「バー」という音がして、もわっとした何かを感じたが、それだけだった。さらに近づいて行くと、何かに触れた。

シードグール:

種別: モンスター・不死・植物

レベル: 34

HP: 79%

状態: 敵対、真理の枷+5

説明: 人に似た身体を持つゾンビ。しかし、その本体は体内に寄生する植物の種であり、子孫の苗どころとなる体を求めさまよう。

識別:

体力: 153

魔力: 34

筋力: 68

防御: 51

精神: 68

知性: 51

敏捷: 17

器用: 17

属性: 木

弱点: 炎

掴んでいるので、投落で地面にたたきつける。そして、炎属性付与からの連踏を打ち込むと倒すことができた。少々HPは高いが、「雷の鉄拳+1」による炎属性増幅は偉大だな。

すると、斜め右前から、同じようにバーという音がして、もわっとした何かを感じた。その方向へ近づくと、またシードグールだったので、たぶん、さっきのバーという音の正体が暗闇と恐怖のブレスなのだろう。

「モンスターの群れを倒した。経験値を、ユーは405、ブレイオは800、ラフィは1884獲得しました。」

その後、ボッコボコにして倒したら終わった。そして、たった4匹で2000近い経験値を得たラフィだった。現在がレベル34なのだから、当然のことだ。

とりあえず、浄水を浸かって手を洗い、送風を使って悪臭を散らしておく。シードグールの臭いが体に残っているせいで、モンスターを引き寄せても困るし、こっちが臭いをわからなくなることも不便だからだ。

「お疲れ様。予想したよりも順調だね。ラフィちゃんの魔歌が効いてるのかな?」

「俺たちもそれだけ強くなった、というのはあるだろうが、ラフィの力は大きいぞ。樹木殺しの本領発揮、といった所だな。」

「ん。ユーやリーネを襲う植物、私が許さない。」

「おや?次が近づいて来ている?いや、徘徊している感じかな?」

「徘徊しているのは森渡りすや甲殻蟷螂、シードグールだな。ちなみに森妖精や水草の精は探知魔法で向かってくるタイプだ。残りは、近づくまでは持ち場に留まるタイプだったか。」

「あぁ、小さいのがいるからりすだろうね。あとは、気配がわかりにくいから、蟷螂?いや…」

「主人。精霊の眷属の気配だ。」

「水草か。ブレイオ、見えたら落雷で落とせ。あいつが近くにいると炎なんかが消されたりするそうだ。」

「心得た。」

程なくして2戦目が開始した。リーネさんによると、森渡りす2匹、水草の精1匹とのことだ。

「うわ!あのりす避けるのか!でも、立体起動なら私も負けないよ!」

「いや、小さいやつを追いかけるのは効率悪いぞ!ブレイオ、落雷でたたき落とせ!」

「キュ!」

なんて話をしていたら、後ろからそんな声がして、何かギュっとされた。森渡りすだろう。捕まえて滝落をしたら倒せた。

森渡りす:

種別: モンスター・獣

レベル: 35

HP: 53%

状態: 敵対、真理の枷+8

説明: 食料を求めて樹海を駆け回る栗鼠。旅人を見つけると、立体的な動きで翻弄し襲いかかる。

識別:

体力: 35

魔力: 70

筋力: 52

防御: 35

精神: 70

知性: 52

敏捷: 122

器用: 70

属性: 土、風

弱点: 氷

「森渡りす達と水草の精を倒した。経験値を、ユーは461、ブレイオは751、ラフィは1447獲得しました。」

「ユーさん、さっきりすにがぶってされていたように見えたけれど、体は千切れてないかな?」

「あぁ、アレは前歯だったか。とりあえず千切れてはないし、そもそも刺さってもいないな。」

「だよね~。とりあえず、ラフィちゃんがすくすく育ちそうだね。でも、剣術も使わせてあげたいかな?」

「だそうだ。ラフィ、剣術でも戦ってみるか?」

「ん。やってみる。」

その後、俺たちは樹海の浅層で狩りに明け暮れたのだった。

なお、ラフィの装備は「氷銀の剣」なので、単体攻撃に限れば、魔歌よりもモンスターへの通りは良かった。ただ、森渡りすに交わされたり、ハンマープラントに腕を縛られたりもしたため、やはり魔法も必要という結論にはなった。