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「キースノーズ雪原に入りました。」
ルーカスを仲間に加えた俺たちは、キースノーズ雪原にやってきた。
ここには、「凍結抵抗」技能を得るために一時的に入ったことはあるが、ちゃんと挑むのは今回が初めてだ。
そんなキースノーズ雪原の出現モンスターは以下の通りだ。
スノーウルフ: 雪原内を動き回っている体毛が白い狼。凍結ブレスを吐いてくる。雪原内で最もエンカウントしやすい。
雪かき土竜: 雪中を移動する土竜。地上の雪が盛り上がっているので目視ではわりとわかりやすい。戦闘では、氷属性の魔法や、雪を舞い上げて視界不良にしてきたりする。近づくと雪中に逃げ込もうとする。
ペングニール: 結氷エリアに近づくと襲ってくるペンギン。氷の滑りやすさを利用して加速、突進してくる。なお、水中でも高速遊泳から突進してくる。
アイススパイ: ホムクの試練洞窟にもいた、目玉生物。凍結の凝視攻撃と、レベルアップで習得したアイビームを放ってくる。雪原と言う開けた空間での戦闘なため、離れた位置から襲ってくる。
ミニイエティ: 白い体毛のゴリラのようなモンスター。距離が遠い内は雪玉を高速投擲してくるが、ある程度近づくと爪やキックなどで攻撃してくる。
灯霊: 夜になると出現する鬼火系統のモンスター。炎と氷属性の魔法を使う。
雪原内にある結氷エリアから水中に入ると出会えるモンスターもいるのだが、今回は考慮しなくても良いだろう。まとめウィキによると、結氷の水中に入ると、「凍結抵抗」では足りないというレベルで冷凍されるらしいからだ。つまり、戦う以前の問題である。
(ナビー。雪道の洞窟、秘密の氷園、大樹の遊び場を経由して迎都キースノーズへ向かいたい。近い順に先導してくれ。)
(了解しました。大樹の遊び場から向かいます。こっちです。)
アヤから送られてきた「行きたい雪遊びスポット」は3箇所だった。従って、それらを巡りながら、雪原の中心部にある街へと向かうルートを設定し、ナビーに先導してもらう。
「ん?狼が2匹と、猿?」
「なるほど。ここだとラフィちゃんの索敵が優秀かもね。雪の影響かな?」
「雪玉やブレスには注意な。まぁ、直撃してもたいした被害は出ないかもだけれど。」
「おぅ。スパイク、突撃だ!」
「ルーカスさんは相変わらずだね。私も行ってくるよ。」
「ラフィとブレイオ… は過剰戦力か。アヤさんとメイレンを守ってくれ。」
最初のモンスターは、推定スノーウルフ2匹とミニイエティのようだ。
ただ、ルーカスというアタッカーが来てくれたので、戦闘は彼らにお任せで良いだろう。ルーカスには、経験の腕輪を貸してある。
そして、さっきからアヤの返事が無いが、いつものことで済ませて良さそうだ。何かあればブレイオやラフィが動くだろう。
「大樹の遊び場に入りました。プライベートモードに変更しますか?」
(プライベートにしてくれ。)
出てきたモンスターは、ルーカスとリーネさんが問題無く処理してくれた。たまにブレイオやラフィが出撃、俺は祈祷で後方支援をしていた。
そして、最初の目的地に到着した。
「でっかい木だな。葉っぱは無いみたいだが、雪が積もって、白くなってるぜ。」
「うん。キレイだね!」
「雪、いっぱい。木にも積もってるよ!」
まとめウィキによると、「大樹の遊び場」は、中心部に巨大な樹木が立っている広場だそうだ。また、大樹の周り、及び、枝部分には雪がこんもりと積もっているらしい。
なお、この大樹、枝も含めて破壊不能だ。このため、安定移動系の技能を育てていれば、枝の先まで歩いていくことも可能とのこと。
「これが大樹か。触った感じは完全に木だな。」
「ん。緑の力、感じる。木、元気。」
「ユーさん、この木って、伐採できないんだよな?マジか?」
「枝も含めてマジだな。試してみると良いぞ。」
俺は、そのまま大樹の幹に沿ってぐるりと周ってみた。結果、幹の大きさは直径20メートルくらいはあったように感じた。もはや、木の形をした塔なのかもしれない。
「うへ~!伐採斧でもダメなのか!一応、切れ目は入るみたいだが、すぐに治っちまう!」
「凄い再生力だね。どう見ても細枝なのに切り離せなかったよ。というか、下から捕まったのに折れないなんておかしくないかな?」
ルーカスとリーネさんは伐採などを試したようだ。だが、斧をたたきつけて傷しか付かない上に、すぐに治ってしまうとのこと。でも傷が付くなら、特級や超級まで育てればあるいは…
とりあえず、そんな頑丈な木ということなので、登ってみることにした。木登りの経験はあまり無かったのだが、問題無く登ることができた。ステータスや技能によるアシストのおかげだろう。
そして、枝の上を歩いてみたり、這って枝先まで移動して触れてみたりした。現実だと絶対に落下しそうな状態だったが、問題なくできた。まぁ、服は汚れたかもしれないが…
「あ、ユーさん。私ここにいるから、こっち来ないでね。ぶつかったら落ちちゃうかもしれない。」
「ん?アヤさんか。そこは木のてっぺんなのか?」
「一番上の枝だよ。もっと上はあるけれど、雪が積もってるだけだから、踏んだら落ちちゃうと思う。」
「よくそんな所に上がれたな。」
「うん。何回か落ちちゃったけれどね。痛かったよ~。」
いつの間にか、アヤも登ってきていた。木の上から見られる景色を楽しんでいるのだろうか?
なお、俺は木登りをしたのだが、普通は「跳躍」と「安定動作」程度の技能があれば、地上から目的の枝へとダイレクトに飛び乗ることが可能だ。猿系のモンスターの大半はこの技能を備えているらしい。
しばらく遊んだ後、俺たちは次の目的地「雪道の洞窟」へと向かった。
「雪道の洞窟」は、雪原の所々にある小さな洞窟の奥に存在するエリアだ。洞窟の中でも普通にモンスターは襲ってくるのだが、該当する場所まで行けば安全地帯になるそうだ。
「アオォォォォン!」
「うるせぇ!」
洞窟の中でスノーウルフに遠吠えされてしまった。仲間を呼び寄せるための呼び声だったはずだが、音波攻撃と言っても良い騒音と反響だった。
「ぬ。後方から来ているぞ。」
「ラフィ。集まってくる相手に朧月だ。」
「なんだ?ラフィちゃんは歌ができるのか?」
「朧月は眠りの魔歌だな。ちょっとは大人しくなるだろう。」
ラフィの魔歌も、やはり洞窟で使うと相応に響くようだ。ただし、効果が効果なので、ここで聞いている分には「心地よい歌」に聞こえる。
なお、プライベートエリアに入るまでの時間を稼いだだけなので、帰りには入口を塞いでいるであろうスノーウルフたちとのバトルになる可能性が高い。できれば、あきらめて解散して欲しい所だ。
「雪道の洞窟 に入りました。プライベートモードに切り替えますか?」
(プライベートにしてくれ。)
そんなあれこれはあったが、無事に第2の目的地に到着。
「雪道の洞窟」は、洞窟内なのだが、なぜか、地面が大量の雪で覆われている上に、使っても補充されるらしい。「奥の方に、雪を生み出す精霊やモンスターが住んでいるのでは?」という考察がまとめウィキに掲載されていた。
「ここ、おかしくねぇか?なんで洞窟の地面が柔らかい雪でいっぱいなんだ?」
「異人たちの間では、奥の方に雪を生み出し続けるだけの何かが住んでいて、そこから流れ込んでくるという仮説がされていたぞ。少なくとも、モンスターが冷蔵庫にするために持ち込んだものではないようだな。」
「確かに、天然の冷蔵庫にするなら、こんな風に地面には敷き詰めないね。ただ、ここからだとモンスターの気配を感じないよ。危険な感じもしないから、本当に安全なんだろうけれど。」
洞窟の隅の方に移動して、雪を手に取ってみた。だが、鑑定結果は普通の雪だった。
雪:
種別: 素材
説明: キースノーズ雪原の地表を覆う堆積物。
品質: 3/10
一応、集めて溶かして浄化、祝福してみた。だが、「冷たい」以外に変わった点は無かった。
上級聖水:
種別: 素材・水
説明: 浄化の力によって清められると共に、祝福によって力を祝した水。水に触れた物体に光の力で干渉し、浄化する作用がある。
品質: 5/10
上級気留水:
種別: 飲料・水
説明: 強い気の力によって祝福された水。飲用することで、肉体を一時的に活性化させる。
性能: 飲用(体力、筋力、防御上昇30%, 持続時間30分)
品質: 5/10
注意: 飲用からゲーム内3時間以内に再度飲用した場合、効果が4分の1になる。
上級の聖水にはなったが、これは祈祷術が進化した影響であって、雪溶け水は関係ない。何しろ、浄水筒から出した水でも上級の聖水が作れることは確認できているのだから。
「ユーさん、その水は何だ?発光しているようだが、ポーションか?」
「雪溶け水から聖水を作ってみた所だ。そういう技能が生えたからな。欲しいならやるぞ。」
「なるほど。ん?こいつは、マッスルドリンクか!」
「ルーカスでも知っていたか。上級品だから、効果は保証するぞ。」
「たまに村に来る商人から買っていたんだぜ!ユーさんのは、もっと凄そうだな!」
ルーカスはモンスターに突撃するので、マッスルドリンクは有用だろう。同性だからか、遠慮もなく受け取ってくれるようだ。
「ユーさん、雪溶け水が流れてる所があるよ。」
その後、お誘いもあったので行ってみた。確かに、さっきから、池特有の、水が揺らいでぴちゃぴちゃ鳴っている音が聞こえていたので、気になっていたのだ。
ただし、落下すると凍結という危険地帯だ。なので、ナビーに「池の淵」へ先導してもらう方法を取っている。
無事に、淵に到着できたので、とりあえず杖を突っ込んでみる。それで、水の深さを知ることができた。手を伸ばせば触れることは可能そうだ。
なので、しゃがんで水に触れてみた。最終的には、氷に触れたような冷たさを感じる水だった。
湖に触れていると、「始まりの草原」で魔法習得のため、湧き水に手を漬けていた時のことを思い出すな。
「ん?ユー、手から魔力出てる。水に広がってく。」
「おっと、悪かった。初めての魔法を覚えるためにやっていたことでな。」
「初めての修行か。我の初めての修行は、」リーネ殿の後を追うことだったな。」
「お?ブレイオちゃん、追いかけてみるかな?まぁお姉さんの方がもっともっと早くなってるけどね~。」
「ぬ。挑まれたなら応えよう。」
「ん?追いかけっこ?私も行く。」
その後、洞窟内での追いかけっこが勃発したのだった。なお最初からわかっていたことだったが、結局、ブレイオとラフィはリーネさんには追いつけなかった様子。