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「雪道の洞窟」で遊んだ後、俺たちが次に目指した場所は、最後の遊びスポット「秘密の氷園」だ。まとめウィキによると、ある洞窟を抜けた先の広場らしい。
「あぁ、この気配、やっぱり入口に貯まっているみたいだね。」
「スノーウルフたちか。よほど執念深いやつらだな。」
「ん。4匹はいる。あと、イエティが近くにいて、たぶん混ざってくる。」
「ユーさん。群れに突撃してよ。ユーさんの防御力なら問題無く耐えられるはずだから、てきとうにかき乱してくれれば、私たちが遊撃するよ。」
「まぁ防御力は育ててるからな。ただ、俺の後に続くのはブレイオの雷人形がいい。」
「ふむ。心得た。」
「アオォォォ!アオ!」
「吠えてるとやられるぞ。やるのは俺だけどな!」
炎属性を付与して直進すると、なぜか正面に立って吠えてきたので、そのまま掴んで連気拳を叩き込んだ。スノーウルフは炎が弱点なので、これで一匹倒せた。
「アオォ!」
「お、そこにいたんだな!」
スノーウルフたちは、親切なことに吠えて位置を教えてくれた。というのは半分くらいで、残りはブレイオの⛈人形の性かだった。単純に雷人形にぶつかられてダメージを受けたり、バチバチとした音で位置がわかったりした。
「ウホホッ!」
「お?お前もこっち来たか!」
そんな具合に、スノーウルフやミニイエティたちと戯れて、かき乱しどころか5匹ほど倒してしまった。ルーカスの経験値にすることが望ましいのだが、来てしまった物は仕方ない。
ただ、増援はあったようで、そっちの方で経験値は稼げていた。モンスターの討伐ログが20匹近くあったので、けっこうな群れを呼び込んでしまったのだろう。
「ユーさん、ぜんぜんダメージ受けてないなんて凄いね。」
「物理耐性のおかげだな。ブレスの方も、メインが凍結効果だったようだし。」
「助かったぜ。あの数だと、今の俺じゃ死んじまいそうだ。」
「それにしても、もう夕方が近いね。秘密の氷園だっけ?そこまで行くのが限界かな?」
「たぶんな。だが、想定通りだから安心して良いと思うぞ。」
その後は、夜限定のモンスターである「灯霊」とも遭遇した。
灯霊:
種別: モンスター、ゴースト
レベル: 24
HP: 100%
状態: 敵対、真理の枷+8
説明: 雪原で倒れた者たちの魂を食らうと伝えられている。炎と氷の魔法を操る。
識別:
体力: 12
魔力: 60
筋力: 12
防御: 24
精神: 72
知性: 36
敏捷: 36
器用: 48
属性: 炎、氷
弱点: 水、光、闇
何匹かは、発見したブレイオやアヤに倒してもらったのだが、せっかくなので一匹だけ触れることにした。
結果、ゴーストらしく、普通にはどうやっても触れることができなかった。ただ、「魂掴」で掴んだ時に手が燃えるようなことは無かった。炎属性の魔法は使うが、「本体が燃えているわけじゃなく、そういう形状を保っているゴースト」というまとめウィキのデータは正しかったのだ。
「秘密の氷園 に入りました。プライベートモードに切り替えますか?」
(プライベートにしてくれ。)
そんな移動を経て、20時少し前に目的地に到着。暗くなってきたらしいので、そこでログアウトすることになった。
そして翌日…
テントから出てきた俺に声をかけてきたのはアヤだった。
「おはよう、ユーさん。」
「ん?アヤさん、もう来ていたのか?」
「うん。凄いんだよ、ここ。キレイだからメイレンと見て回っていたんだ。」
「そうか。ルーカスとリーネさんは…」
「起きてるぜ。いや、こいつはすげぇ。氷の橋みたいなのもかかってるじゃねぇか。」
「昨日は暗くてよく見えていなかったよ。暗視があっても、暗いものは暗いからね~。」
「秘密の氷園」は、雪原エリアの一画にあるスケートリンクのような場所だ。一応、普通の道も所々にあるが、それ以外は分厚い氷で覆われているらしい。それと、「上の方にある氷の橋のようなもの」だが…
「滑雪そりっと…」
「滑雪そり?ということは、ここから滑り降りるのかな?」
「その通り。凄いスピードになるそうだぞ。」
まずは、秘密の氷園の名物と言われる「アイススライダー」にやってきた。ちゃんと左右に壁があるので、氷の冷たささえ何とかすれば滑り降りることが可能だ。なお、アイススライダーへ続く道は、途中の階段も含めてちゃんと普通の道で繋がっている。
そりの上に乗り、少し押し出してみるとスタート。徐々に加速していき、正面から感じる強い風や、地面を滑ったり安全柵に引っかかったりした音、そして、超高速で移動して行くという感覚を感じることができた。実際の速度はわからないが、俺が全速力で走るよりは速かったと思う。
しばらくすると、滑っていた時に感じた風の抵抗や、滑る音などが静かになっていった。どうやら、一番下まで滑り降りたようだ。
なお、滑り降りた先は無限ループの区間になっている上、なぜか同じスライダーを利用した人とぶつからないようになっているらしい。滑っている最中の加速と、止めたくても止まれないことを考えるとうれしい仕様である。
ただ、俺が出した結論は、「滑っている感じはしたが、メインは景色であるようなので、一人で滑る必要はもう無い」であった。
「行くぞ、ラフィ。」
「わ!どんどん速くなっていく!」
「景色はどうだ?」
「氷の中、グルグル回ってる。動きが速くて不思議。」
「なるほど、グルグルか。それと、リーネさんとどっちが速いんだ?」
「ん?前に背負ってもらった時より速い。」
なので、次はラフィと滑った。
「リーネさんに背負ってもらった」時というのは、ラフィが幼魂の頃の話だったはずだ。確か、縮地で爆走してもらったと記憶している。つまり、このアイススライダーは、その速度に匹敵するのかもしれない。
「ブレイオ。行くぞ。」
「縮地に匹敵する速度。興味深い。」
「そういえば、ブレイオも、もうすぐ疾駆が進化だったな。縮地を取らせたいと思っているんだが、どうだ?」
「素早い移動だったな。それなら我も望む所。なら、この速さを知ることに意味はある。」
続いて、ブレイオとも滑った。
「縮地」は、「疾駆」の進化先で、俺が取得した「定駆」と違うルートだ。ブレイオやラフィには、遊撃における立ち回りの速さや、緊急回避の能力を得て欲しいので、「縮地」へ進化させたいと考えている。
「ユーさん、このそり、どこで手に入れたんだ?すげぇスピードが癖になっちまったぞ。」
「ホムクで雪原向けの雑貨を扱っていた店だな。今日向かう迎都でも買えるはずだ。」
「なるほど、そいつはいいな。だが、それはそれとして、ちょっと借りるぜ。また滑ってくる!」
どうやら、ルーカスはアイススライダーを気に入ったようだ。まぁ俺が知る限り、遊びスポットでなければ堪能するのは難しいはずだ。なので、NPCであるルーカスだと、滅多にお目にかかれないだろう。
その後、俺は地上の氷エリアを滑って周ったが、この時にも、滑雪そりは活躍した。このそりは、前から引くことも、後ろから押すことも可能な構造になっているのだ。そして、後ろから押しながらスケートすると、一種の補助輪のような役割をしてくれるのである。
「あぁ、楽しかった。」
「そうか。なんか、時々アヤさんの奇声?悲鳴?みたいなのが聞こえていたような気がするんだが。」
「あぁ、えっと。滑って転んだりもしたよ。でも、登れる所とかもあって、景色が凄くキレイだったんだ。」
「うん。アヤ、転んでも大丈夫。僕が回復できるから。」
「そうか。ちなみに、そりを押しながら滑ると転びにくくなるぞ。」
「え?あ、そっか。確かにメイレンを押した時、楽だった。」
そんな話をしつつ、しばらく遊んだ後、俺たちは出発…
お昼は過ぎたが、本日の終着地「雪原の迎都 キースノーズ」に到着したのだった。